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●家庭・学校と地域社会 −地域教育社会学−
2000年後期履修
岡崎友典(放送大学助教授)
(設問)現代日本の「過程周期」(ライフ・サイクル)の特徴をふまえて、教育の課題について、身近な事例をとりあげ、具体的に論じる

 現代の家族の夫婦から見たライフサイクルのデータ(出典:『厚生白書』1992年、『家族データブック』有斐閣1999年)によると、大正期(1920年)当時に比べて現在(1991年)の平均寿命は男が61.1歳から77.2歳へと16.1歳、女が61.5歳から82.8歳へと21.3歳も延びた。大正期は定年年齢が60歳で定年後が1.1年しかないが、現在は65歳定年でも、定年後の人生が男で16.1年もある。第二の人生という言葉が象徴するように、現在の高齢社会では老後の人生設計をも含めたライフサイクルの設計が重要になってくる。

 このことは、つまり現役時代と退職後の生活が人生にとって同じ重みを持つということであり、ただ単に老後の生き方を考えるのではなく、老後を含めた人生全体の設計を考えなければ本当の幸せな人生を全うすることができないことを意味している。

 また、子どもに対しても現代の日本社会は様々な影響を与えている。家庭形態として核家族が多くなり、また親同士の地域間の交流の機会も少なく、子どもの養育が親と学校だけになっている。子どもの生活環境についても、親の目が届く家の中や近所の公園などと学校とに限られており、安全性などを理由に、子どもが自分の意志で、自分が選んだ友だちと自由に遊びにでかける場所がなくなっている。子どもが生活する社会や環境の選択肢が減り、閉塞感があったり無意識に自己規制をして生活している場合が多い。

 このように現代のライフサイクルの特徴や社会構造の変化から生じたゆがみが現れ始めているが、特に子どもに対して顕著である。  現在、私は埼玉県志木市に住んでいる。志木市は、都心の池袋から電車で約20分の距離にあり、人口約6万5千人の東京のベッドタウンという性格の都市である。1960年代の中頃から人口が増え始め、特に80年代の増加が目立つ。移り住んだ人々の大部分の意識は職場がある東京に向けられており、地域への帰属意識は一般 に低い。

 私は、1986年、結婚を機に東京に近く仕事に便利という理由で、仮の住まいとして現在の志木市のマンションに引っ越してきた。48歳の私と、40歳の妻と中学2年生の長男、小学3年生の次男の4人家族である。

 仕事は児童書の挿し絵や童画の制作で、オフにはバードウオッチングを趣味として楽しんでいる。子どもの養育過程で、子どもの原風景・原体験の重要さに気付き、92年から地域の自然環境を守る活動を始め、地域の環境資源を対象にした自然観察会などを積極的に行ってきた。そして、95年に『エコシティ志木』という環境まちづくりの活動を行う市民グループの設立に加わり、現在、継続してその活動を続けている。

 『エコシティ志木』の会員数は現在110名で、男女比はほぼ半々。40代後半以上が中心メンバーで、主婦、定年退職した男性、現役会社員など、新しく志木市に移り住んだ人がほとんどである。

 活動は「水と緑」「ごみとエネルギー」など4つの部会を中心に行っている。環境学習に関する活動では、小学生の総合的な学習の時間への出前プログラムや、親子で自然体験をする活動などを行っているが、文化を次世代に伝承する重要な活動だと考えている。つまり、現代日本のライフサイクルや家庭形態から生じた課題を抱えている子ども世代と老後の人生を模索している壮年以上の世代との異年代、地域と学校とがお互いに融合することによって、お互いに課題解決に向かい、さらに新しい価値が芽生える可能性がある。

 現代日本の、特に子どもが抱える課題を考える場合、私自身の『エコシティ志木』での活動を通 じて、地域のNPOがその橋渡しとして果たす役割は大きいと感じている。

 メンバーの活動の様子を観察すると、それぞれが、環境をよくしたいという使命感を持っていることはもちろんだが、年代、男女によって参加意識に多少の温度差があることが分かる。30代〜50代の現役で働いている人は自分の仕事の技術をボランティア活動に提供し活かそうという意識を持っている傾向がある。定年後の人は、活動が自己実現の機会・居場所ともなっていると感じさせる場合が多い。女性のメンバーは、子どもによい環境を残すというプログラムにより意欲的に参加する人が多いと思える。

 つまり、NPOの活動が地域の新しい教育力として今後の日本社会で重要な役割を担うと同時に、それを支えるリーダーやスタッフ自身の生涯学習の場として、自己実現の場としての役割も持っている。当然、学校や行政と協力することでより効果 的であることはいうまでもない。

(1,880字)


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