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環境カウンセラー(環境省・市民部門)
●2000年・応募論文
(論文テーマ)地域住民の活発な環境保全活動を推進していくために環境カウンセラーとして果 たすべき役割は?

 白神山地を後世に残すことに反対する人はほとんどいない。トトロの森や海上の森を残したいという世論も高い。自然環境の悪化、減少による悪影響は誰もが認めるところだが、さて、身の回りの自然を考えたとき、どれだけの人が気に留め、積極的に保全し残していこうと考えているのだろうか。全国レベルで見るとさほど価値がない、どこにでもあるような身近な環境を保全するしくみや手法が確立されていない。気がついたらいつの間にか隣りの雑木林がなくなっていたという体験をした人は多いはずである。自然体験が減りその大切さに気付かないまま成人する人も増えている。環境保全が叫ばれる中で、現実には自然環境が生活の場から乖離してどんどん特別 な存在になってきている現状がある。

 それらを解決するには、地域の環境資源を使ったねばり強い環境学習による気付きが必要である。そして地域のコンセンサスが必要になってくる。環境カウンセラーの役目の一つにこの地道な活動の推進支援があると考える。

 1980年代に私は日本野鳥の会に入り野鳥観察をするようになった。都会で暮らしていたが、出かければいつでも豊かな自然体験ができると思っていた。事実、休日には双眼鏡や超望遠レンズをかついで東北、北海道、そして秩父や東京湾に出かけ、バードウォッチングを楽しんだ。結婚して埼玉 県志木市に引っ越しても、将来はもっと環境の良い場所に移る計画でいた。

 しかし、子どもが生まれ、保育園へ送り迎えするようになると考えが変わってきた。私は自然環境豊かな山村で少年時代を過ごし、そして利便性を優先した仮の住まいとして今の土地に引っ越してきた。ある日ふと、我が子が保育園からの帰り道、アリを見つけて喜んだり、草を踏みつけたりする姿を見ていて思った。この子にとっては、幼児期を過ごすこの場所がかけがえのない原風景なのだ。この子のふる里であるこの街を大事にすることがこの子の成長にとって重要なのではないだろうか。将来を担う子どもに理想的な原風景を提供したい。生活の場所にこそ本物の自然をおく必要がある。そう強く感じ始めた。

 この思いが、私が地域で活動を始めるきっかけとなっている。

 92年、私はR埼玉県生態系保護協会の志木支部の設立に加わっていて、いくつかの自然観察会を提案した。近くを流れる川でのバードウォッチング、商店街のツバメの巣の観察会、河川敷と団地の公園を利用した鳴く虫の観察会、トンボとチョウの観察会、どれも親子で大盛況だった。目を輝かせる子どもたち、何でもない草原に価値を見つけた若いお母さん、風景として何気なく見ていた林をせっせと手入れをしている人がいることを知ったときの驚く姿から、これからの活動への手応えを強く感じた。身近な環境資源を活用して観察会を開き、足元のちょっとした草むら、林、川原の大切さを肌で感じてもらうことの正しさを実感することになった。

 これらの観察会はシリーズとして今でも継続しており、現在私が地域で環境保全活動を行い、95年に環境まちづくりNPO「エコシティ志木」での循環型のコミュニティづくりを目指す実践活動、提言活動をスタートしたことへとつながっている。  地域の環境を保全するために環境カウンセラーが果たすべきことはたくさんあると思うが、私が環境カウンセラーとしてやりいたことは二つある。一つは今までやってきた「自然観察」を通 して足元の自然の楽しさ大切さを実感してもらうこと。もう一つは、身近な環境を守れるような「環境まちづくり」活動の推進支援をすることである。これが全国いたるところで展開されるようになれば、地域の環境保全は飛躍的に進むはずである。

●地域から発信する…Act Locally Think Globally  Think Globally Act Locally。環境問題の解決のために「地球規模で考え、行動は足元から」という考え方のこの言葉がよく使われるが、私はあえて「Act Locally Think Globally」と言い替えたい。まず足元で行動し、その実感を地球規模の環境保全に拡大することが大切だと思うから、そのことを意識的に伝えるためである。

 自然観察会はその具体的な導入となる。地域を見つめ、地域の環境資源を教材に知の蓄積を行う。参加者の気付きと行動へと導く。そして最終的にはアイデンティティーを確立し、地域愛を育てる。その結果 、今あるものを大切にしながら持続可能な豊かなコミュニティを追求するコンセンサスの形成に役立つのである。

1)地元の環境資源を使った自然観察会のすすめ

 地域の環境を保全する導入として、地元の環境資源を使った自然観察会を活用することをおすすめする。自然観察会のきっかけづくりや、観察会の後どう展開するかという段階で環境カウンセラーのファシリテーターとしての出番がある。  まず、タウンウォッチングやリバーウォッチングなどのフィールドワークにより地元を歩き、肌で宝物に気付き、発見する。そしてそれをプログラムづくりに活かす。このときに得た感動が、後にリーダーとして関わることになる人たちの財産となるのである。つまり、学習(講座やフィールドワーク)→気付き→感動・愛着→プログラムづくり(ワークショップ)→自然観察会への一連の活動へと展開していくのである。

2)継続していくために

 この観察会で最も大切なことは、知識を与える・得るということではなくて、参加者自ら気付くことをサポートし、楽しみを分かち、そして継続していくことである。企画立案、参加者の募集など、できるだけ地元の人材で継続して行えることが基本となる。環境保全のスタートとなる活動なので、観察会当日だけでなく、スタッフ会議の段階から楽しくできるプログラムにしたい。

 自然観察会→より多くの人の気付き→仲間(サポーターやスタッフ)が集まる→継続する(グループづくり)へとつなげていくのである。  そして是非、報告書や環境教材も自分たちでつくってほしい。体験を反芻し、より深める手助けとなるばかりでなく、自分の住んでいる足元が教材や印刷物になることでより価値を定着することになるし、現在やっている観察会を環境保全の次のステップに展開する役目もする。

●点から面へ…環境まちづくりへの展開

 地元の環境を保全するという活動は、バリアをつくって環境を外の圧力から保護することではない。環境をコミュニティで育み、楽しみ、次の世代へ手渡していくことである。次のステップとはつまり、より多くの人を巻き込み、地域の環境保全のコンセンサスを形成することである。入口は自然観察会であるが、地域の環境を保全しながら持続可能な発展を具現する循環型コミュニティづくり、つまり「環境まちづくり」の運動への展開となり、Act Locally Think Globallyの具体的な実践である。

1)シンボルとなる活動を始める

 環境まちづくりという広範な活動にしていくためにはシンボルとなる活動が必要になる。その際のポイントを3つあげてみた。  まず、誰もが参加でき、達成感が得られるもの。例えば、学校ビオトープづくり、落ち葉や生ゴミの堆肥化運動などのように地域全体を巻き込んでのワークショップや実行段階では地域の人の参加が欠かせない活動がよい。これらの活動は、専門知識がなくても参加でき、そのつどこれだけできたという達成感もある。

 2つめのポイントは、ここで完成というものではなく、継続していかなければならない活動であること。すぐに実現できなくても一歩ずつ前進していることが実感できるもの。次はどうなるかという期待感も持って次も参加したくなることが必要。循環型の社会に一歩近づいているという手応えが感じられる活動がよい。

 そして3つめは、前項で述べた自然観察会に比べてスタッフもアクションも多彩 なプログラムが理想である。それは、様々なニーズの人が魅力を感じることができ、より興味の強い人、専門的な知識を持った人はスタッフとして達成感を得ることができることになるからである。

2)環境まちづくりの実践

 人を惹きつける企画を用意し、より多くの人を巻き込む。当然、行政との協力体制も考える。シンボルとなる活動を継続するためには一つのプログラムだけでは行えない。リーダーを養成する講座、関連する観察会や勉強会、地域との交流、しくみづくりのための行政との協力、資金、広報、組織の維持・運営…、様々なことが必要になってくることは自然観察会の比ではない。ところが、特定の個人や組織の負担を増やしては活動を継続することができなくなる。  発想を変えれば、じつはこの問題点こそが地域の知恵を結集するチャンスとなる。もちろん一つの組織だけで担う必要はない。環境学習を行う組織、実行委員会など、地域の組織や行政に担ってもらうことがたくさんあるはずである。行政をその気にさせる。そこまでくれば、入口は自然観察会だったが、いままさに「環境まちづくり」として活動が点から面 に拡がってきたといえる。

 ただ何もないところから環境まちづくりまで展望することは容易ではない。果 たしてどの位置に自分たちの活動はあるのか、本当に実現するのか、目の前の問題を処理しながら活動を続けているとなかなか全体が見えない。そこを補完するのが環境カウンセラーなどの役割だと思う。特定の個人や組織に負担をかけないためにも焦らないことが大切だ。ゆっくりと時間をかけ、機が熟すのをじっと見守る。自然観察会が何年も続いてもよい。見守り、機会を見て次のステップへそっと背を押すのも環境カウンセラーの役目である。

 
以上。3,935文字

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